今では世界中で知られる嬉野茶は600年の歴史があり、多くの人から親しまれている。その嬉野茶を現在の太田市郎治製茶園は先代から代々受け継がれ、時代のニーズに合ったお茶を探求している。代表 太田裕也(おおた ゆうや)さんは茶師としての家業を継ぎ3代目となる。1987年嬉野生まれ嬉野育ちで小学校は轟小学校、中学校は嬉野中学校 高校も嬉野高校に通い幼少期は小中高と野球三昧な毎日を過ごし、川釣りやバス釣り、エギングなど魚釣りも趣味である。高校卒業後は静岡県の野菜茶業研究所に行き2年間お茶の勉強して嬉野に戻る。現在は奥様と二人三脚で農園管理をしている一方で商品の作り方や売り方も模索し嬉野を盛り上げようとお茶づくりを営んでいる。
生まれた時からお茶農家で育ってきたが、将来は家業を継いでお茶農家になりたいと思っていたわけでもなかった。
太田さん:いや最初は全然思ってなかったですよ。高校卒業するときにどうするかてなって、先輩達の年代が静岡の研究所に毎年数名ずつ行かれてたので、近所の同級生も行くってことだったので、まぁいいかなくらいの気持ちで覚悟を決めて行ったというより、とりあえず行ってみようて感じで行きました。帰ってきてからは自分が継ぐと決めてやってますけど、じいちゃんのときからすると60年くらいになりますね。静岡から帰ってきて1年半くらいは親子3代でしてましたね。私自身も妹と弟がいますけどお茶の仕事をしてるのは私だけです。親父も10年前に急逝したので、それからは妻と2人で自分たちの売る分を作ってます。摘んだ後の工場の工程とかは周りの方の協力をいただいたりもしてますね。
嬉野はお茶を生業にする業者の方がたくさんいらっしゃる中でも太田さんは生産・加工・販売と全てに携わっている。 これも先代から代々伝わる太田家のやり方である。 日々受け継いだお茶を守りながら、時代にあったお茶を探求している。
太田さん:お茶を作るのはいいんですけど、どうやって売っていこうかなとか、どうやってお客さんに伝えていこうかなていうとこで、茶園管理もそうなんですけど、作るだけ作っても結局需要がなかったら破棄したりしないといけないし需要に応えるお茶って何だろうていうのが考えどころですね。どんなお茶が求められてるのか、味が濃いのがいいのか、アールグレイみたいに香りが良いのがいいのかそういうのを常に考えてますね。まぁ売り方というか、作り方というか、売るための作り方みたいなのをですね。今は小売り重視なってきたのでお客さんの要望に応えられるような感じでモノづくりを頑張ってるところですね。先々代の時から市場にも出してたし、販売もしてたのていうのがあるので今自分もやれてる部分があると思います。社名の由来もじいちゃんが市郎治なので、それは譲れないですね。
顔が見えるお茶屋さんで直接注文が出来る。 お客さんの生の声が聞けるのも太田さんとしても強みである。
太田さん:作ってる人の顔が見えるっていうのが一番の売りかなと思います。お客さんからもこういう香りのお茶がないのとか直接声もピックアップ出来て、そのまま商品づくりに活かせるし頑張ってみようてなります。アールグレイなんかは特にそうなんですけど、イベントとかの売り出しに行ったときにお客さんから直接アールグレイ無いの?っていう一声がきっかけで商品化して販売するようになったんでですね。販売もお店を構えてないので、電話やWebで問い合わせや依頼を受けて発送するようなかたちです。
嬉野で生まれ育ち37年。今の嬉野への想いを聞いてみた。
太田さん:嬉野っていうお茶の産地を他と比べた時にお茶がある、宿場町で温泉もある、夜の街もあるこの3つが揃った町って他のお茶産地にないんですよね。お茶はあるけど泊まるとこがなかったりとかするので、こういった特産が揃った町の強みを活力にどんどん攻めていけたらて感じですよね。お茶だけが良いとかじゃなくて、町全体で盛り上げれるような仕組みができたらなていうのは思いますね。きっかけづくりじゃないですけど、末廣菓子舗さんとのお茶とお菓子のコラボ商品とかしたりしてますけど、嬉野に来たらこれがあるよねてなるような目玉商品とか、嬉野にきたら完結するよねっていうような企画商品とがあれば嬉野がもっと盛り上がるんじゃないかて思います。私も今はうれしの紅茶振興協議会に所属してますけどもっと他業種間交流が欲しいなっていうのがあって、旅館さんがされてるような農家さんとかをピックアップされたりとかもおもしろいと思うし、お茶だけとか、旅館だけとかじゃなく町全体でやれたらいいなと思いますね。
ひとことでお茶といっても数えきれないほどの種類あるが太田市郎治製茶園では自然に近い栽培を行い、こだわりを持って安心安全なお茶づくりを心掛けている。
太田さん:葉っぱを摘んでそのまま蒸したら緑茶、萎凋(いちょう)っていって野菜とかもですけど 摘んだら萎(しお)れるじゃないですか、摘んだ後に萎れさせて揉んで発酵度合いを分けたのがウーロン茶か紅茶かってなります。ちょっと間の製法は端折ってますけど。アールグレイっていうのは紅茶にベルガモットっていうみかんの香りを付けたものです。あとは緑茶を焙煎、コーヒーみたいにローストしたらほうじ茶です。今扱ってるのは緑茶、紅茶、ほうじ茶の3つがメインになってます。あとは摘んだものを仕分けてランク付けみたいな感じですね。
・香り高いお茶作り
・優しい甘みが感じられるお茶
・何杯も飲みたいと思ってもらえるようなお茶
・簡単で誰もが美味しく淹れられるお茶
特にこの4つはこだわってやってます。
幼少期から野球を続けてきた太田さん。茶師の仕事の傍ら父として今は子供の野球を応援している。
太田さん:小学5年から中学、高校と野球をやってましたので、部活三昧の日々を送ってました。近所のお兄ちゃんとか同級生がやってたのできっかけで。当時は読売ジャイアンツの松井秀喜がホームランを打つのがかこいいなって思ってました。自分がやってるときは守備はキャッチャーしたり内野したり色々したんですけど打つのがメインだったので四番を取れるようにやってた感じでしたね。今は全くしてないんですけど、小中高としてきて人付き合いとか礼儀とかそういうことも学べたのは やっててよかったなと思います。子供が野球をしてるので今はそれに付き合うって感じで、たまにキャッチボールしたりとかですね。
取材をしている時に太田さんの故郷を盛り上げたい、もっと知ってもらいたいという熱意が伝わってきた。茶師としてのこだわりや、嬉野に対する思いを聞くことができとてもいい勉強になった。これからも先代から受け継いだお茶を後世に伝えていただきたい。